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​1 非居住者の小規模宅地(特定居住用)特例

​2 親族間の相当地代

​3 袋地(旗竿地)の旗振り評価 

​4 公益法人等による慈善と節税

​5 年金と相続税

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非居住者の小規模宅地(特定居住用)

​ No.1

​非居住者の小規模宅地(特定居住用)特例

 イギリスに13年ずっと住んでいます。最近日本で暮らしていた母が亡くなり、母が住んでいた日本の家と敷地を相続することになりました。私は、元は日本に住んでいて国籍は日本なのですが、結婚して以来ずっとイギリスで暮らしています。日本へは数年に 1回位しか行きませんし、これからもイギリス

に住む予定です。相続税の小規模宅地の特例は受けられますか。

考え事

✍ ご回答

​ 相続税の小規模宅地(特定居住用)特例の要件を満たしますと、被相続人(亡くなった方)が居住用としていた宅地等は330㎡まで 8割の評価減が可能となります。その要件の一つに、いわゆる「家なき子」のケースというものがあり、その特例を適用するための要件は次のとおりです。

(1) 被相続人の親族が、被相続人の居住していた宅地等を相続または遺贈で取得したこと。

(2) 宅地等の取得者は、相続税法第 1条の 3第 1項 第 1号、同項第 2号に該当する者、又は同第 4号に該

   当する者で日本国籍を有する者であること。

(3) 被相続人の配偶者がいないこと。

(4) 相続直前に被相続人の居住家屋に他の相続人が居住していないこと。

(5) 取得者・取得者の配偶者・三親等内の親族・同族法人の所有する、相続税法施行地内にある家屋

    (被相続人の居住家屋を除く)に、相続開始前 3年以内に取得者が居住していないこと。

(6) 相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続前に取得者が所有したことがないこと。

(7) 相続開始から相続税申告期限まで引続き、取得した宅地を所有していること。

 ずいぶん沢山の要件があります。上記要件の(2)の相続税法第 1条の 3第 1項は、相続税の納税義務者を定める条項で、取得者は同条項の上記記載の各号に該当する相続税の納税義務者でなければならないということになります。この条項は難解ですが重要ですので、以下、少し簡略にして書きます。

1 相続税法第 1条の 3第 1項第 1号

   相続税の納税義務者は、財産取得時点で日本に住所を有する、

  イ 一時居住者(注1)でない個人。

  ロ 被相続人が外国人被相続人(注2)または非居住被相続人(注3)でない時の、一時居住者であ

    る個人。

(注1) 一時居住者 

        相続開始の時に在留資格を有する者で、相続前 15年以内に日本に住所を有していた期間が 10

    年以下の者。

(注2) 外国人被相続人

               相続開始の時に在留資格を有し、かつ日本に住所を有していた被相続人

(注3)   非居住被相続人

               相続開始の時に日本に住所を有せず、相続前 10年以内に日本に住所を有したことがある者で、

             日本国籍を有していなかった者、または相続前10年以内に日本に住所を有しなかった者。

2 相続税法第 1条の 3第 1項第 2号

   相続税の納税義務者は、財産取得時点で日本に住所を有しない、

    イ 日本国籍の個人であって、

   (1) 相続前10年以内に日本に住所を有していたことがある者。

          (2) 相続前10年以内に日本に住所を有していない者で、被相続人が外国人被相続人または非居住

                被相続人でない時。

      ロ 日本国籍を有しない個人であって、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人でない時。  

3 相続税法第 1条の 3第 1項第 4号

   相続税の納税義務者は、財産取得時点で日本に住所を有しない個人で、日本国内の財産を取得した

   者で、第 2号に該当する者を除く。

    (この場合は、相続税法第 2条により、取得した日本国内の財産に対してのみ課税されます。)

 

 相続税の納税義務者の条項は、国際的課税方針の変更に対応して頻繁に改正が行われ、その度に内容・条文が複雑化又は変更されておりますので、理解及び追従するのに大変骨が折れると思います。

 さて、以上の特例適用要件をご相談のケースで考えてみましょう。

(1) 「被相続人の親族が、被相続人の居住していた宅地等を相続または遺贈で取得したこと。」

   これは前提ですからいいですね。

(2)   「宅地等の取得者は、相続税法第 1条の 3第 1項 第 1号、同項第 2号に該当する者、又は同第 4号に

        該当する者で 日本国籍を有する者であること。」

        国際的相続では、これが重要なポイントになります。

   あなたは、財産取得時点で日本に住所を有せず、日本国籍で、相続前10年以内に日本に住所を有し

     ていないけれど、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人でない場合の納税義務者になり、

  上記の相続税法第 1条の 3第 1項第 2号イ(2)に該当します。従って、OK。

(3) 「被相続人の配偶者がいないこと。」

   これはご事情によります。

(4) 「相続直前に被相続人の居住家屋に他の相続人が居住していないこと。」

        これもご事情によります。

(5) 「取得者・取得者の配偶者・三親等内の親族・同族法人の所有する、相続税法施行地内にある家屋

      (被相続人の 居住家屋を除く)に、相続開始前 3年以内に取得者が居住していないこと。」

     相続税法施行地内にある家屋とあり、イギリスの家屋は含まれないことになりますので、あなたが

       配偶者や親族等の所有する家屋に住んでいても、OKとなります。

(6) 「相続開始時に取得者が居住している家屋は、相続前に所有したことがないこと。」

    相続時点でお住まいの家屋がご自分の所有だった時がなければ、OKです。

(7) 「相続開始から相続税申告期限まで引続き、取得した宅地を所有していること。」

    取得した土地を相続税の申告期限まで所有していれば、OKです。

 以上の検討の結果が全てOKとなれば、特例の適用が可能となります。

 

 現実に案件が生じた折には、下記法令等をご参照なさって、扱いに正確を期して頂きますようお願いいたします。理解にそごが生じる恐れもございます。なお、当方に解決をご依頼の際には、責任をもって検討させて頂きます。

                     2021.6.6 更新 yxiaolin117@gmail.com 税理士 小林禧継

根拠となる法律

相続税法第 1条の 3(相続税の納税義務者)

相続税法第 2条(相続税の課税財産の範囲)

租税特別措置法第69条の 4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)

租税特別措置法施行令第40条の 2

租税特別措置法施行規則第23条の 2

NO.2

親族間の相当地代

親族間の相当地代

 自宅建物全てとその敷地の 1/2を 3年前に夫から相続しました。敷地の 1/2は娘が相続しています。娘は 2年前に結婚し家を出ました。娘の土地持分 1/2については、私が無償で借りていたわけですが、最近娘に地代を払ってやろうと考えています。娘はできるだけ多い方が良いと言っています。相当地代は通常の地代と比べて高いそうですが、私が娘に相当地代を払うのは税務上いかがでしょう。

​ 相当地代で賃貸を始めたとして、何年か経って土地の値段が変わってきた時にはどうなりますか。

シニア患者

✍ ご回答

 借地人の経済的地位の高さから、更地価格に占める借地権の割合は大きく、国税庁の発表している路線価図では、借地権割合が 8~9 割の地域もあります。そのような地域では、土地所有権ではなく、借地権付建物の売買契約も多く、借地権取得のための費用は多額なものになります。

 敷地の 1/2に借地権を設定するとなると、娘さんに多額の代金を払うことになり、また娘さんは借地権の譲渡所得課税がされることにもなります。借地権の対価を支払わずに借地契約を結び、通常の地代の授受をしますと、娘さんからあなたへ借地権の贈与があったとされて、多額の贈与税があなたに課されることになります。

 そこで、「土地を借りているのだから、地代を払ってもおかしくない。借地権についての課税がされないように借地契約ができないか。」と考えることになります。これは、土地所有者が主宰する法人に土地を貸す時によく問題になります。借地権の設定に際し通常権利金を授受する取引上の慣行がある地域で、借地権相当の対価の支払いなく法人が借地をすると、法人は借地権の受贈益に対して課税されます。この課税を避けるために、法人は通常の地代より高い「相当地代」と呼ばれる地代を払う選択をすることができます。

 土地の所有権(借地権に対する底地権)に比べ、借地権の割合が大きければ大きいほど、地代は低くなるという原理から、逆に地代を高くすれば借地権の占める割合は低くなり、借地権が全くない場合には地代は最も高くなると考えられます。そこで、借地権相当の対価の授受がなくても「相当地代」の授受をすれば、借地権は 0であるから借地権 についての課税はないということになっています。これを基本として、法人税の扱いでは、相当地代の最低限度の金額が、過去 3年間の相続税評価額の平均値の概ね年 6%程度と定められています。

 税務上のこの扱いは、借地関係の原理から生まれているものであるため、相続税・贈与税の場合でも、同様の扱いが通達で定められています。ただ、法人は営利を目的とする法的人格で自然人とは異なる点があり、実際上は個人間で相当地代の授受が行われる例はほとんど見ることはありません。個人間で借地権を0として借地する場合は、親族間の無償使用がほとんどで、子が親の土地上に家屋を建て無償で借地を始めても、それが自然であるとされ、借地権の贈与として贈与税が課税されることはありません。

​ 土地所有者と借地人に対立的要素がある、または対立が生じたとすれば、地代の授受に自然な面もあり、相当地代の授受ということも納得されることがあると思われます。対立的要素もなく、子に収入を得させたいということになりますと、贈与的な要素や相続税対策の面も感じられるようになります。親子間で、他人間と同様に建物の賃貸をすることもありますので、親子間で相当地代の授受をしても不自然ではないでしょうが、例がほとんどありません。実行には勇気が必要ですね。

 土地の値段が上がって来て、地代が相当地代より低くなった時は、自然発生的な借地権が借地人に生じたと考えることもできます。この自然発生の借地権について、発生した時点または年分で課税する規定はありません。その後、相続税・贈与税の課税原因が生じた折に、相当地代と実際地代の差額を基に通達の算式により借地権価格を算出し、それに従って相続税・贈与税の課税をすることとされています。

​ 法人税の通達では、法人が土地所有者である時に、相当地代を収受している間の地代の額の改定方法について届出をすることが定められています。方法は、土地価格の上昇に応じて地代の額を相当地代の額に改定する方法とそれ以外の方法の 2つです。そして、概ね 3年ごとに地代を相当地代の額に改定してきた場合には、課税時期における借地権を 0と扱い、そうでない場合には、通達により自然発生的な借地権を計算するようになっています。相続税・贈与税の関係では、そのような地代の改定についての通達上の定めはありませんが、基本的な考え方は同様と思われます。営利主体の法人格と自然人との差から、通達上の規定に差が生じていると考えられます。

 なお、土地の値段が下がった場合には、相当地代を超えた金額は贈与と判定されることが考えられますが、相続税評価額を基に相当地代を計算しているとすれば、差額はある程度柔軟に考えることはできると思われます。

 

 現実に案件が生じた折には、下記法令等をご参照なさって、扱いに正確を期して頂きますようお願いいたします。理解にそごが生じる恐れもございます。なお、当方に解決をご依頼の際には責任をもって検討させて頂きます。

                     2020.4.30 yxiaolin117@gmail.com 税理士 小林禧継

根拠となる法令等

法人税基本通達 13-1-1 ~ 13-1-16

「相当の地代を支払っている場合の借地権についての相続税及び贈与税の取扱いについて」

昭和 60年 6月 5日 国税庁(例規) (平成3年、17年改正)

袋地の旗振り評価

NO.3

袋地(旗竿地)の旗振り評価

 評価する宅地は、路線価の付いた道路から私道を通って奥深い所にあり、相続税評価をするのに、私道の特定路線価の設定申請をせずに、路線価を基準にして袋地の評価をしようと考えています。路線価に近い方の私道に面した土地と比較すると、評価する土地は奥深く不利なので、この不利な点を評価に反映させる方法はありますか。

✍ ご回答

 国税庁のホームページに掲載されている事例を基に考えてみましょう。まず、次の事例の 1件目は四角な形の土地の例です。事例は、私道幅が 1mと狭く、道路への 2mの接道義務を満たしていない場合の事例ですが、奥行きが深いため、路線価に近い方の評価対象外の土地 ②の評価額を(評価対象地 ①+対象外の土地 ②)の合計評価額から控除することにより、評価対象地の評価額を算出しています。

(①+②)の土地の奥行価格補正率が 0.97であるのに対し、②の土地の奥行価格補正率は 1.00ですから、(①+②)- ② の方法で評価すれば、評価対象地 ①の㎡当り単価は ②の単価より少し低くなり、奥深い所にある不利な点を評価に反映することができます。

国税庁のホームページの事例 1

接道義務を満たしていない宅地の評価 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/19.htm

【照会要旨】

 右の図のように間口距離が短く接道義務を

満たしていない宅地はどのように評価するの

でしょうか。

                           

【回答要旨】

 通路部分を拡幅しなければ、建物の建築に対して著しい制限のある宅地なので、無道路地に準じた評価を行います。なお、無道路地として評価する際に控除する通路に相当する部分の価額は、通路拡幅のための費用相当額(正面路線価に通路拡幅地積を乗じた価額)とします。

(計算例)

1 評価対象地 ①の奥行価格補正後の価額

(1) 評価対象地 ①と前面宅地 ②を合わせた土地の奥行価格補正後の価額

  路線価   奥行価格補正率   ①+②の地積

 100,000円 × 0.97(奥行25m) × 375㎡  = 36,375,500円

 

(2) 前面宅地 ②の奥行価格補正後の価額

  路線価   奥行価格補正率   ②の地積

 100,000円 × 1.00(奥行5m) × 70㎡  = 7,000,000円

 

(注) 奥行距離が 5mの場合の奥行価格補正率は「0.92」であるが、「0.92」とすると前記(1)の評価対象地 ①と前面宅地 ②を合わせた整形地の奥行価格補正後の単価より、道路に接する部分が欠落している不整形地の奥行価格補正後の単価が高くなり不合理なので、このように前面宅地の奥行距離が短いため奥行価格補正率が 1.00未満となる場合においては、当該奥行価格補正率は 1.00とします。
 ただし、前記 (1)の評価対象地 ①と前面宅地 ②を合わせて評価する場合において奥行距離が短いため奥行価格補正率が 1.00未満の数値となる場合には、前面宅地の奥行価格補正率もその数値とします。 

(3) (1)の価額から(2)の価額を控除して求めた評価対象地 ①の奥行価格補正後の価額

 ①+②の価額   ②の価額   ①の奥行価格補正後の価額

 36,375,500円 - 7,000,000円 = 29,375,000円

2 不整形地補正(又は間口狭小・奥行長大補正)後の価額

 不整形地補正率 0.96(普通住宅地区 地積区分A かげ地割合18.67%)

 かげ地割合=[ 375㎡(想定整形地の地積)-  305㎡(評価対象地の地積)] / 375㎡ = 18.67%

  間口狭小補正率 0.90 (通路拡幅後の間口距離 2mに対するもの)

  奥行長大補正率 0.90 (通路拡幅後の間口距離 2m・奥行距離 25mに対するもの)

 不整形地補正率 間口狭少補正率        間口狭少補正率  奥行長大補正率

 (     0.96  ×   0.90  = 0.86 ) > (    0.90   ×     0.90   = 0.81  )

 奥行価格補正後の価額   間口狭少補正率・奥行長大補正率 

   29,375,000円   ×       0.81        = 23,793,750円

3 通路拡幅部分の価額

  路線価     通路部分の地積           評価通達の定める限度額

  100,000円 ×    5㎡   = 500,000円 <  23,793,750円 × 0.4

4 評価額

 奥行長大等補正後の ①の価額    通路拡幅部分の価額   評価対象地 ①の評価額

     23,793,750円     -    500,000円   =   23,293,750円

 

【関係法令通達】

 財産評価基本通達20-3

 次に、事例 2件目は四角でない複雑な形の土地の場合です。この場合も奥行きが深いため、1件目の事例と同様に(①+②)- ② の方法で評価を行っています。ただし、形状が複雑ですから、まず ①の近似整形地(近似整形地は、近似整形地からはみ出た部分と内側にへこんだ部分の面積がほぼ等しく、その合計面積が最小となるような整形地とされます。)を作図し、隣接する ②の整形地を作図します。ここから、事例1と同様に(①+②)- ② の方法で、まず奥行きだけの補正を行った後の、近似整形地 ①の㎡単価を算出します。近似整形地を基に奥行き補正を行うのは、形状が複雑なため、平均的奥行きを求め、(①+②)と②の平均的奥行きを基に補正を行う趣旨と解されます。その後、評価対象不整形地の不整形補正の計算を行います。

 しかし、近似整形地を求め、作図するのは困難な場合が多いと想像されます。近似整形地の代わりに想定整形地を使って奥行きを計算すれば、奥行き補正が簡単になりますが、想定整形地を使うと近似整形地を使った場合と比較して原理的なずれが生じるため、事例によっては評価額に有利・不利が生じる可能性があると考えられ、注意が必要です。

 

国税庁のホームページの事例 2

不整形地の評価―差引き計算により評価する場合  ttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm

【照会要旨】

 右の図のような不整形地はどのように評価

するのでしょうか。

 

【回答要旨】

 近似整形地 ①を求め、隣接する整形地 ②と合わせて全体の整形地の価額の計算をしてから隣接する整形地 ②の価額を差し引いた価額を基として計算した価額に、不整形地補正率を乗じて評価します。

(計算例)

1 近似整形地 ①と隣接する整形地 ②を合わせた全体の整形地の奥行価格補正後の価額

  路線価   奥行価格補正率    ①+②の地積

 100,000円 × 0.95(奥行30m)×  600㎡   = 57,000,000円

 

2 隣接する整形地 ②の奥行価格補正後の価額

  路線価    奥行価格補正率   ②の地積

 100,000円 × 1.00(奥行15m) × 150㎡  = 15,000,000円

 

3 1の価額から 2の価額を控除して求めた近似整形地 ①の奥行価格補正後の価額

  ①+②       ②     近似整形地 ①の価額

 57,000,000円 - 15,000,000円 =  42,000,000円

 

4 近似整形地 ①の奥行価格補正後の 1平方メートル当たりの価額(不整形地の奥行価格補正後の 1平方

  メートル当たりの価額)

 近似整形地 ①の評価額     ① の地積

      42,000,000円   ÷   450㎡  = 93,333円

5 不整形地補正率

 不整形地補正率 0.88(普通住宅地区 地積区分A かげ地割合 35.71%)

 かげ地割合= [ 700㎡(想定整形地の地積)-  450㎡(評価対象地の地積)] /  700㎡ = 35.71%

 

6 評価額

 近似整形地の単価  評価対象地の地積  不整形地補正率

   93,333円  ×   450㎡   ×    0.88   = 36,959,868円

 

(注意事項)

  1.  近似整形地を設定する場合、その屈折角は 90度とします。

  2.  想定整形地の地積は、近似整形地の地積と隣接する整形地の地積との合計と必ずしも一致しません。

  3.  全体の整形地の価額から差し引く隣接する整形地の価額の計算に当たって、奥行距離が短いため奥行価格補正率が 1.00未満となる場合においては、当該奥行価格補正率は 1.00とします。
     ただし、全体の整形地の奥行距離が短いため奥行価格補正率が 1.00未満の数値となる場合には、隣接する整形地の奥行価格補正率もその数値とします。
    ​ 

 

【関係法令通達】

 財産評価基本通達20

 以上、国税庁のホームページ掲載の事例を基に、旗振り評価を考察しました。ご相談を承ります

                    2020.9.20 yxiaolin117@gmail.com 税理士 小林禧継

公益法人等による慈善と節税

NO.4

​公益法人等による慈善と節税

 農業の傍ら慈善活動を行っています。相続税を払うより慈善活動に財産を使った方が良いので、公益法人への寄付や遺贈、場合によっては公益法人などを設立して財産を移したいと考えています。どうすれば最も有効に財産を慈善に生かせるでしょうか。

田植え

✍ ご回答

1 財産移転の方法の選択と税務

    財産の移転先が税法上の公益法人等と認められますと、寄付者の相続税や財産の移転先の法人税に特典が認められることがあります。まず、財産移転の方法について記載します。公益法人等の種類や、公益法人へ寄付を行った時の税務上の特典の詳細は後の 2以降の項目をご覧ください。

 公益法人等への財産の移転の方法としては、① 存命中の寄付  ② 遺贈  ③ 遺言により相続人に寄付をさせる、の3方法が考えられます。公益法人等を設立して財産を移転する場合は、公益法人の種類の選択や運営も関係してきますが、財産の移転については同様に考えることになると思われます。

 

 (1) 存命中の寄付

  ① 寄付された財産は相続財産でなくなるので、相続税の課税は無くなります。

  ② 寄付を受けた者が法人であるため、贈与税の課税はありません(相続税法第1条の4)。また、

   公益法人等の寄付財産の受け入れは収益事業に該当しないので、法人税の課税もありません(法

   人税法第4条第1項)。

  ③ 寄付財産が不動産等の含み益のある財産である場合には、寄付時点の時価で譲渡したとされ、

   原則的に譲渡所得課税がされますが、租税特別措置法第40条の公益法人等への譲渡の非課税の申

   請を行い、承認される場合には非課税となります。

  ④ 寄付者の所得税申告上、該当すれば寄付金控除が受けられます。

 

 (2) 遺贈

  ① 相続と同時に法人の財産になり、相続税の課税はありません(相続税法第1条の3)。また、法

   人税の課税も上記(1)②と同様になります。

       ② 寄付財産が不動産等の含み益のある財産である場合には、上記(1)③と同様ですが、租税特別

   措置法第40条の非課税の申請は、被相続人の所得税について、相続人が行うことになります。

  ③ 上記(1)④と同様に、該当すれば寄付金控除が受けられますが、実際の支出は相続人によって

   行われることになるので、「単に贈与契約が成立しただけでは支出したことにはならない」とい

   う国税庁の見解からすると相続人が寄付金控除を適用することになると考えられます。

 

 (3) 遺言により相続人に寄付をさせる

  ① 相続人が相続税の申告期限までに公益法人等へ寄付を行いますと、相続税又は贈与税の負担が

   不当に減少する場合を除き、相続税の課税は無くなります(租税特別措置法第70条)。

    ② 寄付を受けた法人の課税については、上記(1)②と同様です。

    ③ 寄付財産が不動産等の含み益のある財産である場合には、上記(1)③と同様ですが、財産を相

       続して寄付を行った相続人が租税特別措置法第40条の非課税の申請をすることになります。

  ④ 寄付者の所得税申告上、該当すれば寄付金控除が受けられます。

 

 (4) 上記の3方法の比較

   比較してみますと、非課税の扱いがされるのであれば、3方法とも同様の結果になり、実施する

  時期の違いや、手続きを誰が行うかの違いしか無いように思われます。

 

2 公益法人等の種類

   税務上の公益法人等は、法人税法第2条及び同法別表第 2(公共法人は別表第 1)に掲載されていま

  すので、寄付や遺贈をされる場合にはご参考になると思われます。新規に公益法人等を設立する場合

  には以下の3区分のいずれかを選ぶことになると考えられます。まず、それぞれの概要を記載しま

  す。

 

​   (1) 一般社団法人・一般財団法人の両法人の内、非営利型法人の要件を満たす法人

      そのような法人は公益法人等として取り扱われます(法人税法別表第 2 )。税務上は、収益事業

   から生じた所得のみが法人税の課税対象とされます(法人税法第 4 条第1項)。

  ① 一般社団法人

    構成員(社員)が重視され、2名以上の社員(社員総会が最高意思決定機関)、1名以上の            理事(業務執行機関)が設立時に必要です。規模が大きくなりますと理事会・監事等の設置をす

     るようになります。社員が剰余金又は残余財産の分配を受けることを定款で定めることはできま

       せん(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第11条第2項)が、基金と称される拠出財産

     の定めがあり、法人は拠出者に対して返還義務を負います。現物拠出財産については価額の総額

     が 500万円を超える場合には、価額を調査させるため裁判所に対し検査役の選任の申立てをする

          必要があります。基金は寄付金と異なり法人への無利息貸付の性格を持つものと解されます。 

   理事の報酬は定款または社員総会で定めます。

           設立手続きは、定款作成 ⇒ 公証役場で定款認証・役員選任 ⇒ 登記 です。

  ② 一般財団法人

      拠出された財産(基本財産)が重視され、設立時に設立者が 300万円以上の財産を拠出しま

     す。財団の設立、財産の拠出は遺言によっても可能です。遺言による場合は、遺言執行人が財産

   の拠出を行います。設立時に 3名上の評議員(全ての評議員で評議委員会を組織)、3名上の理

   事と理事会、1名以上の監事(業務と会計の監査役)が必要です。また、大規模一般財団法人は

   会計監査人の設置が義務付けられています。評議員の報酬は定款で定め、理事・監事の報酬は定

   款または評議員会で定めます。設立者が剰余金又は残余財産の分配を受けることを定款で定める

   ことはできません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条第3項第2号)。

      設立手続きは、定款作成 ⇒ 公証役場で定款認証 ⇒ 財産拠出 ⇒ 役員選任 ⇒登記 となりま

          す。

      [残余財産の帰属]

        一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第239条は、両法人に共通する残余財産の帰属につ

  いて以下のとおり定めています。

  第二百三十九条 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。

  2 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は

   評議員会の決議によって定める。

  3 前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。

   この規定によれば、定款では社員や設立者に帰属する定めを置くことはできなくても、清算法人

  の社員総会又は評議員会の決議により帰属させることができることになります。

  [非営利型法人の要件]

    非営利型法人の要件は、法人税法第2条9号の2及び同施行令第3条に定められていますが、

       は次のイまたはロになります。この税法上の定めは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

       の規定内容では、法人の残余財産の分配が公益目的に添わなくなり得ることから設けられたものと

       考えられます。

    イ その事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人で、以

      下の要件を満たす法人。

    * 定款に、剰余金の分配を行わない定めがあること。

    * 定款に、解散したときは残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益法人等に帰属する定

     めがあること。

    * 各理事について、理事及び理事の配偶者又は三親等以内の親族等特殊の関係のある理事

     の、理事総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること。

   ロ その会員から受け入れる会費により会員に共通する利益を図るための事業を行う法人で、以

    下の要件を満たす法人。

    * その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うこ

       とをその主たる目的としていること。

    * 定款に、負担すべき会費の額の定め、又は会費の額を社員総会若しくは評議員会の決議に

     より定める旨の規定のあること。

    * 主たる事業として収益事業を行っていないこと。

    * 定款に、特定の個人又は団体に剰余金を分配する定めがないこと。また、そのような分配

     及び利益の供与の事実がないこと。

    * 定款に、解散したとき残余財産が特定の個人又は団体(国または地方公共団体、公益法人

     等を除く。)に帰属する定めがないこと。

    * 各理事について、理事及び理事の配偶者又は三親等以内の親族等特殊の関係のある理事

     の、理事総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること。

  [収益事業]

    販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもと法人税法第

       2条第13項で定義され、政令で定める事業は同法施行令第5条第1項に列挙されています。

   (2) 公益社団法人、公益財団法人 

    一般社団法人、一般財団法人が行政庁に申請し、行政庁の「公益社団法人及び公益財団法人の       認定等に関する法律」の規定に基づく公益認定を経て、公益社団法人・公益財団法人と認められ

   ます。認定には、活動の公益性と公益目的事業を遂行する機能の面が考慮されます。設立後も、

       事業の適正な運営を確保するために必要な行政庁の監督を受けます。一般社団・財団法人のうち

       の非営利型法人と同様に、収益事業から生じた所得が課税対象となります。

 

   (3)   特定非営利活動(NPO)法人

           公益の増進に資する法人として特定非営利活動促進法の規定に従って設立される法人で、公益法

      人等として法人税法別表第二に掲載がありませんが、特定非営利活動促進法第70条により、法人

        税上の公益法人等とみなされます。設立には、都道府県等の条例の定めにより定款等の書類を添

        付して申請書を所轄庁に提出し、設立の認証を受ける必要があります。設立時に10名以上の

        社員、3名以上の理事、1名以上の監事が必要です。特定非営利活動以外の事業(その他の事業)

        も行うことができますが、生じた利益は特定非営利活動のために使用する必要があります。

     設立後は、毎事業年度の貸借対照表の広告、事業報告書等の所轄庁への提出が定められていま

    す。NPO法人は公益法人等に含まれるため、収益事業から生じた所得のみが課税対象となりま

    す。なお、NPO法人のその他の事業と税法上の収益事業とは別の概念です。

     設立手続きは、社員と役員決定・定款作成 ⇒ 設立の認証申請 ⇒ 所轄庁による公表・認証 ⇒

    登記 となります。

 

   (4) 認定特定非営利活動(NPO)法人

    特定非営利活動法人のうち、その運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資するもの

        は、申請により所轄庁から認定を受けることができます。この認定NPO法人に対する寄付金は、

        寄付者にとって税務上有利な扱いを受けられるため、寄付金の促進効果が期待できます。

 

3  公益法人等への寄付の税務上の特典

  公益法人等への寄付に伴う税務上の特典の主なものは以下の3点になります。

 

 (1) 寄付金控除等

    公益社団法人・公益財団法人・認定特定非営利活動法人(寄付者に特別の利益が及ぶものを除

  く)へのその主目的の業務に関する寄付金について、所得税申告上で寄付金控除又は税額控除を適

  用することが可能です。

 

 (2) 譲渡所得の非課税特例

         所得税法第59条では、法人に譲渡所得の基因となる資産の贈与又は遺贈があった場合には、そ

   の時の価格相当での譲渡があったとみなすと規定されています。不動産・有価証券等の取得時期が

     古く値上がりが見込まれる時には、その値上がりによる利益に課税が行われることになります。

      これについては、租税特別措置法第40条で特例が設けられており、公益法人等に対する財産の

        贈与又は遺贈で、贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公

        益の増進に著しく寄与すると認められる時、政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の

        承認を受けると、国又は地方公共団体へ寄付した場合と同様に譲渡所得が非課税とされます。

    租税特別措置法第40条における公益法人等には、公益社団法人・公益財団法人・特定一般法人

​  (上記 1(1)に記載の非営利型法人のイに該当する法人)・その他の公益を目的とする事業を行う

  法人が該当します。そのうち、公益社団法人・公益財団法人などは承認特例対象法人とされ、国税

  庁長官の承認が迅速化されています。ただし、国税庁長官の個別の承認を条件とする税法上の特例

  は稀で、租税特別措置法第40条申請に対しては厳しい審査が実施されます。

 

 (3) 相続税の非課税特例

    相続又は遺贈により取得した財産を、相続税の申告期限までに公益社団法人、公益財団法人その

   他の公益目的事業を行う法人のうち、教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公

        益の増進に著しく寄与するとして政令で定めるものに贈与をした時には、相続税又は贈与税の負

   担が不当に減少する場合を除き、国又は地方公共団体へ贈与した場合と同様に、贈与をした財産の

   価額は、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格に含めずに済みます。

    これは租税特別措置法第70条に定められており、同条により特例が認められる、政令で定める

   法人は租税特別措置法施行令第40条の3に列挙され、そのうちには公益社団法人・公益財団法人

        含まれています。また、租税特別措置法第70条第10項で、認定特定非営利活動(NPO)法人も同

        様に該当するとされています。

 

 (4) 法人税上の扱い

       公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人と一般財団法人ののうち非営利型法人の要件を満

    たす法人、特定非営利活動(NPO)法人、認定特定非営利活動(NPO)法人は公益法人等として

         取り扱われ、収益事業から生じた所得のみが法人税の課税対象となり、公益事業については課税

         されません。

 

4 公益法人等による節税と規制

    一般社団法人、一般財団法人、NPO法人は出資持分のない法人ですから、財産を寄付しますと、寄

 付財産は相続税の課税対象では無くなります。しかし、寄付者が法人の理事等になれば、所有の財産

 が無くなっても、法人の業務に対し権限を持つことが可能です。そして、親族が理事等に就任するこ

 とにより、権限も実質上親族に引き継がれることになります。財産権が無くなっても実質的に財産に

 対し権限を維持することが可能です。こうして、相続税を納めずに法人に対する権限を維持してい

 ような、相続税の節税対策として寄付が利用されることになります。このような節税に関係する規

 が、次のように相続税法に定められています。

 

 (1) 相続税法第65条第1項(概要) 

    持分の定めのない法人(社団・財団法人、NPO法人はこれに含まれます)で、その施設の利用・

     余裕金の運用・解散の際に、社員・理事等及び法人に特別の関係がある者に財産の贈与又は遺贈が

   あった時には、その利益を受ける者が利益に相当する金額を、当該財産の贈与又は遺贈をした者か

     ら贈与又は遺贈により取得したとみなす。

       (分かりにくい規定ですが、法人の活動により、関係者が財産を無償で取得した時には、法人へ寄

      付を行った者から、財産を取得した者への贈与又は遺贈が行われたとみなして、贈与税又は相続税

      が課税されると解されます。)

         ただし、次の相続税法第66条第4項の規定が該当する場合には、第66条第4項の規定がこの規定に

      優先するとされています。

 

 (2) 相続税法第66条第4項(概要)

         持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合に、贈与又は遺贈をした者の親族

      等、特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となる時には、当該法人

      を個人とみなして贈与税又は相続税を課税する。

       以上の、相続税法第65条、第66条に加え、平成30年に次の相続税法第66条の2が制定されまし

       た。

 

 (3) 相続税法第66条の2(概要)

         一般社団法人等のうち特定一般社団法人等という範疇を設け、特定一般社団法人等の理事が死亡

   した時には、特定一般社団法人等の純資産額を同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額

      を、死亡した理事から遺贈により取得したものとみなして、特定一般社団法人等に相続税を課する

      とされています。

        用語の定義

   *  一般社団法人等

      一般社団法人又は一般財団法人(公益社団・財団法人、非営利型法人、その他相続税法施行

     令第 34 条第4項に定める法人を除く)。

     * 同族理事

     一般社団法人等の理事のうち、被相続人又はその配偶者、三親等内の親族等、被相続人と特

    殊の関係にある者。

   * 特定一般社団法人等

       一般社団法人等であって次の要件のいずれかを満たすもの。

     イ 相続開始直前における、被相続人関係の同族理事数の、理事の総数に占める割合が1/2

      を超えること。

       ロ 相続開始前5年以内において、被相続人関係の同族理事数の理事の総数に占める割合が

          1/2 を超える期間の合計が 3 年以上であること。

  以上の規定は、公益法人等への寄付も、真実に公益のためになされるので無ければ、節税も認め

 い趣旨と解されます。

  現実に寄付等のプランを計画・実行される際には、法令の規定をご確認の上、お間違いの無いよう

   になさってください。なお、当方では、寄付に伴う税務のご相談と申告・申請等の税務代理を承りま

   すので、お問い合わせください。

                                                                                                   2021.10.22  税理士 小林禧継

       

年金と相続税

NO.5

 

年金と相続税

 父の相続税の申告書を作っています。年金の扱いがわかりません。父の年金は母が引き継いで給付を受けているものと、一時金で受け取ったものがあります。一時金で受け取ったものは、生命保険会社の名前が入っています。相続税の扱いはどうなりますか。

​ 未支給年金は一時所得なんて書いている記事がありますが、未収の年金は相続財産にならないのですか。

​ 年金も税金も、もっとわかり易くしてほしいです。

植物への水やり

✍ ご回答

 

 年金は、その種類によって相続税の扱いが異なります。

1 年金が「公的年金」であるとき

 「公的年金」という言葉は法規上見当たりませんが、国民年金及び厚生年金等の政府管掌の年金が該当

 すると考えられます。以下、国民年金法、厚生年金保険法の規定により遺族に支給される年金について

 記載します。

 ① 国民年金法上の「遺族基礎年金」

   被相続人の受給していた老齢基礎年金(基礎的な年金)に対応して遺族が受ける年金になります。

  国民年金法第25条で公課禁止とされ、相続税・所得税共に非課税です。同法による一時金も非課税で

  す。

  * 老齢基礎年金は、20歳以上60歳未満の日本に住所のある全ての人に加入義務があり、雇用され

   ている人、自営業者、学生なども同様に加入義務があります。

 ② 厚生年金保険法上の「遺族厚生年金」

   厚生年金保険法第41条により公課禁止とされ、相続税・所得税共に非課税です。

  * 厚生年金保険の被保険者は厚生年金保険法第 6条に定める「適用事業所」で雇用される70歳未満

   の人です。会社員、公務員が被保険者になります。従って、厚生年金の被保険者は老齢基礎年金と

   厚生年金保険の両方の被保険者になります。

  「公的年金」と異なり、「公的年金等」という用語は所得税法第35条で定義付けされています。「公

  的年金」を含むより広い範囲の年金を意味しています。「公的年金等」は雑所得として、所得税法上

  の規定に従って課税額が算出されます。

2 年金が「公的年金」以外の年金であるとき」

​ 「公的年金」以外の年金には、確定給付企業年金、確定拠出年金、その他の年金があります。「公的年

 金」以外の年金には、法令上公課禁止の規定はありませんが、確定給付企業年金と確定拠出年金などの

 遺族への給付には、相続税課税上、相続人 1人当たり500万円の退職金の非課税枠が適用される場合が

​ あります。

    被相続人が就業中に亡くなったことにより、遺族に支払われる死亡退職金は、相続税法第 3条第 1項

 第 2号により相続財産とみなして課税されることになっています。そして、同法施行令第 1条の 3は

 確定給付企業年金法により遺族が給付を受ける年金又は一時金、及び確定拠出年金法により給付を受け

 る一時金もみなし相続財産になるとしています。また、相続税法第 3条第 1項第 2号に該当するみなし

 相続財産となる退職金は、相続税法第12条により、相続人数× 500万円の非課税枠の適用があります。

  ただし、被相続人が年金の支給を受けている時期に亡くなって、遺族が受ける給付は、相続税法第 3

   条第 1項第 2号の死亡退職金には該当しないとされているため、相続税法第12条に該当せず非課税枠

 適用はないことになります。

 

 ① 確定給付企業年金

   加入者の勤務・給与により給付額の決まる年金で、確定給付企業年金法に従って給付が行われま

  す。この場合の遺族給付金は年金に係る規約の定めに従い、年金又は一時金として支給されます。

 ② 確定拠出年金

   掛金とその運用収益により給付額が決まる年金で、確定拠出年金法に従って給付が行われます。同

  法上の遺族への給付として死亡一時金の定めがあります。

 ③ 国民年金基金

   国民年金を補う趣旨で設けられた年金で、この年金からの遺族一時金は国民年金の死亡一時金と

  様に公課禁止とされています。

 ④ その他の個人年金保険

​   保険会社が扱う保険商品の一種で、保険料に応じて年金・一時金を受け取る契約になっています。

  この契約による遺族給付金は、死亡退職金に該当しない確定給付企業年金・確定拠出年金の遺族給付

  金と同様に課税されます。

   課税額は、 イ. 相続時点の解約返戻金

         ロ. 一時金で給付を受ける場合の金額

         ハ. 将来受け取る年金額を現在価値に割り戻した評価額

   のうち、いずれか多い金額となります。

 

3 未支給年金

  国民年金法第19条には、年金の受給権者が死亡した場合に、死亡した人が受給すべき年金で未支給の

 ものは、親族の請求により同法上指定の親族に支給されるとあり、それに「未支給年金」という名称を

 付しています。具体的には、亡くなった直後の 1回分の年金で、遺族年金や死亡一時金とは区別されま

 す。

  国民年金の規定上、年金の被保険者の資格は死亡した翌日に無くなり、死亡後に支給される「未支給

 年金」は、民法の相続の規定によらずに指定の親族に支給されるため、遺産ではなく、受給した親族の

 一時所得になると税務上扱われています。

  国民年金に限らず、法規上又は年金契約上で同様に規定されている未支給年金は、同様の扱いになる

 と考えられます。そのような規定の無い年金では、未支給年金は被相続人の未収金として遺産に含まれ

 ると考えることができます。

4 以上を踏まえて、あなたの場合を考えてみましょう。

 ① 引き継いで受給されている年金が「公的年金」であれば、相続税の扱いは非課税になります。

 

 ② 「公的年金」以外の年金の場合には、年金が確定給付企業年金や確定拠出年金等の相続税法施行令

  第 1条の 3で定める退職年金等に含まれる給付であり、かつその受給開始前に亡くなっていれば死亡

  退職金として扱われ、死亡退職金の非課税枠の適用があります。受給開始後に亡くなった時には、死

  亡退職金の非課税枠が無くなります。

   また、遺産としての評価額は、上記2④のその他の個人年金保険の場合と同様になります。

 

 ③ 受給された年金・一時金の根拠となった規約・契約内容をご覧になって、どの種類の年金に当たる

  かを判断することがまず必要になります。

 ④ 未支給年金の支給のの根拠となる規定、契約内容により扱いが変わってきますので、該当の年金を

  支給する会社等に問い合わせることをお勧めします。

 

                                 

                             2022.5.6更新  税理士 小林禧継

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